Zoho Creatorとは?CRMでは足りない業務を自社仕様で作る、ローコード開発の考え方

Zoho CRMを導入して運用が回り始めると、必ずこの相談が来ます。
「この業務もZohoでやりたいんですが、CRMの商談管理とは形が違っていて」
製造の工程管理、現場の日報、備品の貸出管理、点検記録。顧客と商談を扱うCRMの枠に収まらない業務は、どの会社にもあります。かといって専用のシステムを一から作るほどの予算はない。結果、その部分だけExcelのまま残る。
Zoho Creatorは、この隙間を埋めるための製品です。この記事では、Creatorで何ができるのかを機能ベースで解説し、あわせてCRMとの使い分けについても整理します。
※機能は変更されることがあります。本記事は2026年10月時点の公式サイトの情報をもとにしています。
Zoho Creatorとは
Zoho Creatorは、プログラミングの専門知識が少なくても、Webとモバイル向けの業務アプリを作成・公開・管理できるローコード開発プラットフォームです。
ドラッグ&ドロップのビルダーで画面を組み立て、必要に応じてZoho独自の言語「Deluge」でロジックを書き足す。この二段構えが基本の使い方になります。
業種別の事前構築アプリも多数用意されているため、ゼロから設計せず、近いものを土台にして自社向けに手を入れる進め方もできます。
アプリを構成する4つの部品
Creatorのアプリは、大きく4つの部品でできています。この構造を理解しておくと、設計の見通しが一気に良くなります。
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フォーム:データの入れ物
データを集めて保存する部分です。データベースで言えばテーブルにあたります。
氏名、メールアドレス、日付、ファイル添付など、入力の種類ごとに項目タイプが用意されており、扱うデータに合わせて選びます。
設計の起点は常にここです。どんな項目を持つか を決めることが、そのままアプリの骨格を決めることになります。
レポート:データの見せ方
フォームに溜まったデータを、読める形で表示する部分です。
フォームを作ると、表形式の一覧レポートが自動で1つ生成されます。そこから絞り込み条件や並び順を設定したり、グラフを含めたりできます。
重要なのは、1つのフォームから複数のレポートを作れる 点です。同じデータを、現場向けには「今日やる分だけ」、管理者向けには「全件を担当者別に集計」といった形で、別々に見せられます。
ページ:複数の情報を1画面に
複数の場所にあるデータを、1つの画面にまとめる部分です。
グラフ、ボタン、パネル、フォームやレポートの埋め込み、外部リンクなどを配置できます。業務の全体像を見せるダッシュボードや、作業の入口になるトップ画面を作るときに使います。
ワークフロー:処理の自動化
決まったタイミングや入力をきっかけに、一連の処理を自動実行する部分です。
そしてここで Deluge が使えます。単純な計算式から複雑な条件分岐まで記述でき、Zoho製品全体で共通して使える言語です。
Delugeが共通であることの意味
ここは実務上、かなり大きな利点です。
Zoho CRMでカスタム関数を書いた経験があれば、Creatorでも同じ言語がそのまま使えます。製品ごとに別の言語を覚える必要がありません。
逆に言えば、すでにZoho CRMを運用していてDelugeを書ける体制がある会社にとって、Creatorの導入ハードルは他社のローコードツールより明確に低いということです。
ユーザーと権限の考え方
Creatorで作ったアプリは、初期状態では非公開 です。作成者(管理者)だけがアクセスできます。
そこから、アプリ全体を共有するか、あるいは個別のフォーム・レポート・ページ単位で、ユーザーやグループに権限を割り当てていきます。
役割ごとに複数のロールを作成して権限を設定できるため、「現場スタッフは入力画面だけ」「管理者は全データと集計画面」といった分け方が可能です。
なお、公開設定をしたコンポーネントに限り、ログインなしでアクセスできます。社外から申込フォームを受け付けるような用途では、この使い分けが前提になります。
社外向けの窓口と、開発環境の分離
公式の製品カタログでは、アプリの構成要素として前述の4つに加えて、ユーザー、モバイル、ポータル、環境、外部連携、AIモデルが挙げられています。
ポータルは、取引先や顧客といった社外の人に使ってもらうための窓口です。社内用の画面とは別に、外部ユーザー向けのアクセス先を用意できます。
環境は、開発用と本番用を分けて管理するための仕組みです。稼働中のアプリを直接触らずに変更を試せるかどうかは、業務で使うアプリでは重要な条件になります。
いずれも詳細はプランによって扱いが変わる可能性があるため、要件に関わる場合は事前に確認してください。
外部サービスとの連携
Zoho製品群との連携に加えて、600以上のサードパーティサービス と接続できます。
また、REST APIのv2が提供されており、Creatorの機能を自社のアプリケーションに組み込むこともできます。既存の基幹システムとデータをやり取りする構成も組めるということです。
セキュリティと権限統制
業務システムとして使う以上、ここも確認が必要な項目です。公式カタログには次の内容が記載されています。
- ユーザーのアクセスを追跡・監視・承認・制限できる
- 役割ベースのアクセス制御
- パスワード強度、IPアドレス制限、多要素認証、セッションタイムアウトの設定
- データ操作履歴の監査ログ
- 保存データはAES-256、通信はTLSで暗号化
- OWASPに基づくセキュリティフレームワーク
準拠している規格として、GDPR、SOC 2 + HIPAA、ISO 27001、ISO 27017、ISO 27018、ISO 9001、SOC 1/SOC 2 タイプIIが挙げられています。
稼働率は月間99.9%を保証しており、状況はステータスページで確認できます。
CRMとCreator、どちらで作るべきか
ここが最も相談の多い論点です。判断の目安を整理します。
CRMで作るべきもの
顧客、商談、問い合わせなど、CRMが前提としている業務 です。
CRMにはパイプライン管理、売上予測、メール連携、営業向けのレポートといった仕組みが最初から組み込まれています。これらを自分で作り直すのは無駄が多く、品質も劣ります。
Creatorで作るべきもの
CRMの想定から外れる業務です。たとえば次のようなものが該当します。
- 製造の工程管理、検査・点検の記録
- 現場の日報、作業報告
- 備品・車両・設備の貸出管理
- 独自の申請・承認フロー
- 業種特有の台帳管理
共通するのは、顧客と商談という軸では整理できないデータ構造を持っている ことです。CRMにカスタムタブを増やして無理に収めることもできますが、構造が合わないものを押し込むと、後から必ず歪みが出ます。
判断に迷ったときの基準
「そのデータは顧客に紐づくか」で考えると整理しやすいです。
顧客や案件にぶら下がる情報ならCRM側、それ自体が独立した台帳として存在するものならCreator側。この線引きで、大半のケースは判断できます。
そして両者は連携できるので、「CRMの商談から、Creatorで作った工程管理アプリへ情報を渡す」といった構成も可能です。分けることが分断を意味するわけではありません。
設計を始める前に決めておくこと
最後に、実際に作る際の実務的な話を書いておきます。
フォームの項目から決める
画面の見た目から考え始めると、後でデータ構造を作り直すことになります。何を記録するのか、それがどの単位で発生するのかを先に固めてください。
レポートは役割ごとに分けて作る
1つのレポートに全部を載せると、誰にとっても見づらくなります。現場用、管理者用と分けるほうが、結果的に使われます。
自動化は後から足す
最初から複雑なワークフローを組むと、検証に時間がかかって立ち上がりません。まず入力と一覧が回る状態を作り、運用しながら自動化を足していくほうが確実です。
現場に触ってもらってから広げる
ローコードの利点は、作り直しが速いことです。完璧な設計を目指すより、早く触ってもらって直すほうが、結果的に良いものになります。
まとめ
- Zoho Creatorは、Webとモバイル向けの業務アプリを作るローコード開発プラットフォーム
- アプリはフォーム(データの入れ物)、レポート(見せ方)、ページ(1画面への集約)、ワークフロー(自動化)で構成される
- DelugeがZoho製品共通の言語なので、CRMで書ける人はそのまま応用できる
- アプリは初期状態で非公開。役割ベースで権限を設計し、公開設定をしたものだけがログイン不要になる
- 600以上の外部サービス連携とREST API v2が用意されている
- CRMとCreatorの使い分けは「そのデータは顧客に紐づくか」で判断する
AndSoでは、Zoho CRMの構築とあわせて、Creatorによる業務アプリの設計・開発を承っています。デザインとシステムの両方を社内で行っているため、現場が実際に使える画面と、業務に合ったデータ構造の両方を踏まえた設計が可能です。「CRMには収まらない業務がExcelのまま残っている」という段階からご相談ください。