Zoho CRMのキャンバス(Canvas)とは?画面を作り直せるデザインスタジオの機能を解説

2026年07月15日

CRMが定着しない理由の多くは、機能不足ではなく画面にあります。

項目を追加していった結果、詳細ページに50も100も並んでいる。営業担当が本当に見たいのは3つか4つなのに、それを探すのに毎回スクロールする。ステータスは文字で書かれているだけで、パッと見て状況が判断できない。

こうなると、現場は「見づらいから使わない」となり、入力も止まります。データが入らなければCRMは機能しません。

Zoho CRMのキャンバス(Canvas)は、この画面そのものを作り直せる機能です。この記事では、実際にどんなことができるのかを機能ベースで解説します。

※機能は変更されることがあります。本記事は2026年9月時点の公式サイトの情報をもとにしています。

キャンバスとは

キャンバスは、Zoho CRMのユーザーインターフェースを再デザインするためのノーコードのデザインスタジオです。公式サイトでは「業界初、コード不要のデザインスタジオ」と表現されています。

デザインソフトを使う感覚で、白紙のキャンバスに項目や画像を配置し、配色やフォントを整えて、自社の業務に合った画面を作れます。ドラッグ&ドロップのマウス操作だけで完結し、コードを書く必要はありません。

公式ブログによると、キャンバスは2017年にタブページ専用の機能として登場し、その後デザインスタジオとして大きく拡張されてきた経緯があります。現在も継続的にアップデートされている機能です。

どの画面をデザインできるか

対象となる画面は、現在4種類あります。

データ詳細ページ

1件のデータを開いたときの画面です。キャンバスの中心的な用途で、カスタムタブを含むすべてのタブで利用できます。

データ一覧ページ(タブページ)

一覧の表示形式そのものを変更できます。画像の追加、項目の自由な配置、背景色の設定、テキストの色・太さ・フォント種類といった書式設定が可能です。

データ入力ページ

入力フォームの画面もデザインできます。ここで作成したビューは、編集ページと複製ページにも自動的に適用されます。

モバイルアプリの詳細ページ

iOSとAndroidのモバイルアプリにも対応しました。現時点では詳細ページのみが対象で、タブページへの対応は開発中とされています。

一覧ページの3つの表示スタイル

タブページのビルダーが刷新され、3種類のスタイルが選べるようになっています。用途がはっきり分かれているので、順に見ていきます。

一覧表示

シンプルな横並び形式です。情報、デザイン要素、アイコンをすっきり配置できるスペースが確保されています。標準的な営業データの一覧に向きます。

タイル表示

名刺を並べたようなデザインで、画像を含むデータの表示に適しています。公式では不動産業や製造業のように、ビジュアル情報が重要な業界に向くと説明されています。

物件、商品、部材のように「見た目で判別するもの」を扱う業種では、文字だけの一覧より圧倒的に速く目的のデータへたどり着けます。

表形式表示

スプレッドシートの見やすさとCRMの利便性を組み合わせたビューです。在庫や請求書のような、シンプルなデータを大量に扱う場面に向きます。

Excelに慣れた現場ほど、この形式のほうが受け入れられやすいという側面もあります。

条件によって見た目を変える

キャンバスの本領はここにあります。単に配置を整えるだけでなく、あらかじめ定義した条件に応じて、表示する情報や表示方法を変えられます。

  • 項目の状態に応じて、項目の表示を変更する
  • 条件付きのスタイルを設定する
  • キャンバスルールを定義して、項目やセクションのスタイルを設定する
  • 条件に応じて、項目やセクションの表示・非表示を切り替える

たとえば次のような設計ができます。

  • 受注確度が一定以上の商談は、カード全体の背景色を変える
  • 期日を過ぎたタスクを持つデータには、赤いラベルを表示する
  • 契約中の顧客にだけ、契約関連のセクションを表示する
  • 与信に問題がある取引先は、上部に警告を出す

重要なのは、見る人が判断を下すために必要な情報を、見た瞬間に届けられる ことです。項目の値を読んで頭の中で解釈する工程が消えるため、現場の処理速度が変わります。

条件による表示・非表示を使えば、「営業には不要だが管理部門には必要な項目」を場面ごとに出し分けることもできます。1つのタブに項目が増え続けても、画面が破綻しにくくなります。

作ったデザインを持ち運ぶ

実務で効いてくる機能を2つ紹介します。

テンプレートのエクスポート/インポート

ユニークなキーを使って、異なるアカウントや組織の間でキャンバステンプレートをやり取りできます。このキーは 最大7日間有効 で、キャンバスが利用できるプランであればどの組織でも使用できます。

これは構築を請け負う側にとって大きな意味を持ちます。業種ごとに作り込んだデザインを資産として持ち回れるからです。不動産向け、製造業向け、士業向けといったテンプレートを用意しておけば、案件ごとにゼロから作る必要がなくなります。

また、キャンバスビューは他のタブ用に複製することもできます。

サンドボックスでの利用

Zoho CRMのサンドボックス環境でキャンバスを使えます。本番に影響を与えずにデザインを試し、まずはベータユーザーに展開してフィードバックを集めてから、本番へ反映するという進め方ができます。

画面の変更は現場の反発を招きやすい領域です。いきなり全社に適用するのではなく、一部のメンバーに使ってもらって調整する手順を踏めるのは、定着させるうえで有利に働きます。

チームごとに画面を分ける

モバイル向けキャンバスの説明では、フィールドセールスチームや配送スタッフチームといった チームごとに動的なビューを作成できる とされています。

外回りの営業と内勤では、同じデータでも見たい情報が違います。全員に同じ画面を見せる必要はない、という発想がキャンバスの根底にあります。

なお、モバイルビューの作成はデスクトップ側のツールで行えます。スマートフォンの小さな画面でデザイン作業をする必要はなく、複数デバイスでの見え方をその場で確認して反映できます。

設計するときの考え方

ここからは、実際に作る際の実務的な話です。

1画面につき目的を1つに絞る

「あらゆる情報を1画面に載せる」という発想でキャンバスを使うと、標準画面より見づらいものができあがります。まず「この画面を開いた人は何を判断するのか」を決めてください。商談の詳細ページなら「次に何をすべきか」、顧客の詳細ページなら「どんな関係性の相手か」です。

色は状態を示すためだけに使う

装飾として色を使い始めると、意味を持つ色との区別がつかなくなります。色は「注意が必要」「完了している」といった状態の表現に限定するほうが、結果的に見やすくなります。

モバイルは別物として設計する

デスクトップのデザインを縮小しても、モバイルでは機能しません。外出先で見る情報は絞り込む必要があります。チームごとにビューを分けられる機能は、この目的で使うのが最も効果的です。

現場に見せてから確定する

作った本人には見やすくても、毎日使う担当者には違うということが普通に起きます。サンドボックスとベータ展開の仕組みは、この確認のために用意されています。

導入効果として期待できること

公式サイトでは、業務内容に沿った分かりやすいインターフェースによって、社内活用率の向上、導入時の立ち上がり、新メンバーへの教育時間の削減が挙げられています。

教育時間の話は実感に合います。標準画面のままだと「この項目はここを見て、この値のときはこう判断して」という説明が必要になりますが、画面自体がそれを表現していれば、説明そのものが不要になります。

利用にあたって

公式ブログには、キャンバスは Zoho CRMのすべての有料プランで追加料金なしで利用可能 と記載されています。無料プランは対象外です。

デザインのテンプレートも用意されており、そこから作り始めることもできます。まずは標準のテンプレートを触ってみて、どこまでできるかを掴むのが早いと思います。

まとめ

  • キャンバスは、Zoho CRMの画面を作り直せるノーコードのデザインスタジオ
  • 対象は詳細ページ、一覧ページ、データ入力ページ、モバイルアプリの詳細ページ
  • 一覧ページには一覧表示・タイル表示・表形式表示の3スタイルがある
  • キャンバスルールと条件付きスタイルで、状態に応じた表示・非表示や配色ができる
  • テンプレートはキーを使って組織間でエクスポート/インポートできる(キーの有効期間は最大7日間)
  • サンドボックスで検証し、ベータユーザーに先行展開してから本番反映できる
  • チームごとにビューを分けられる。モバイルは別設計が前提
  • すべての有料プランで追加料金なしに利用できる

AndSoでは、Zoho CRMの構築とあわせて、キャンバスによる画面設計を承っています。デザインとシステム構築の両方を社内で行っているため、「見た目は整ったが業務に合っていない」「業務には合っているが使いづらい」のどちらにも寄らない設計が可能です。「CRMを入れたが現場が使ってくれない」という段階からご相談ください。

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