Zoho Inventoryとは?実在庫と帳簿在庫の違いから、Delugeによる拡張までを解説

2026年06月23日

在庫管理でよく起きるのが「システム上は3個あるのに、棚には1個しかない」という状態です。

原因はたいてい単純で、記録するタイミングが業務の実態とずれています。請求書を切った時点で在庫を減らしているのに、実際の出荷は3日後だった。あるいは逆に、モノは出したが伝票が後回しになっていた。ECサイトと社内の在庫表を別々に管理していれば、ズレはさらに広がります。

Zoho Inventoryは、この記録のタイミングそのものを選べる在庫・受発注管理ツールです。この記事では、実際にどんなことができるのかを機能ベースで解説します。

※機能は変更されることがあります。本記事は2026年9月時点の公式サイトの情報をもとにしています。

Zoho Inventoryとは

Zoho Inventoryは、ゾーホーが提供する在庫管理・受注管理のクラウドサービスです。

扱う範囲は在庫の数量管理だけではありません。見積から受注、梱包、出荷、請求までの一連の流れと、発注から入荷、支払いまでの購買側の流れの両方を1つのサービスで扱えます。EC事業者、小売、卸売が主な想定ユーザーです。

Zoho CRMやZoho Booksとの連携が前提に設計されており、顧客情報や会計データと繋げて使えます。

実在庫と帳簿在庫を使い分ける

Zoho Inventoryを理解するうえで最初に押さえるべき概念です。手元の在庫を管理する方法として、2つのモードが用意されています。

実在庫

受領と出荷に基づいて計算されます。商品の受領を記録すると増え、出荷を作成すると減ります。つまり モノが動いた時点 の在庫です。

帳簿在庫

受取請求書と請求書に基づいて計算されます。仕入の請求書を記録すると増え、請求書を作成すると減ります。つまり お金が動いた時点 の在庫です。

冒頭のズレは、この2つを区別していないことが原因で起きます。倉庫の担当者が見たいのは実在庫、経理が見たいのは帳簿在庫。両方を別々に持てるからこそ、どちらの視点でも正しい数字が出せます。

注文に紐づかない単発の請求書を作成した場合は帳簿在庫だけが動き、実在庫は変わりません。両者を一致させたいときは、その請求書を「出荷済み」または「受領済み」に設定することで、実在庫側にも反映できます。この照合を自動で行う設定も用意されています。

在庫管理システムの導入で失敗するケースの多くは、この設計を最初に決めていないことに起因します。自社の業務がどちらを基準に動いているのかを、要件定義の段階で確定させてください。

商品まわりの機能

組み合わせ商品

複数の商品をまとめて1つの商品として扱えます。セット販売やキット商品を扱う場合に使います。構成品の在庫と連動させられるため、セットが売れたときに部品側の在庫も正しく減ります。

価格表

顧客ごとに異なる単価を設定できます。取引先ごとに掛率が違う卸売では必須の機能です。

単位変換

取引を作成する際に、商品の基本単位を別の単位へ自動変換できます。「仕入はケース、販売はバラ」という業態でも、入力のたびに換算する必要がありません。

SKUと商品名の重複

同じ商品名を複数登録することも可能ですが、その場合はSKU項目を有効かつ必須にする必要があります。インポート時に商品を正しく紐づけるためのキーとして機能するためです。

シリアル番号とバッチ番号で追跡する

高度な在庫追跡として、2つの方式が用意されています。両方を同時に有効にすることもできます。

  • シリアル番号追跡:個体を1つずつ識別する
  • バッチ番号追跡:製造ロット単位で管理する

いずれも、追跡情報を記録する取引を選べます。請求書、売上領収書、受取請求書、クレジットノート、パッケージ、購入受領書、返品受領書のうち、どれで番号を扱うかを指定できるということです。

取引時に番号の入力を必須にすることもできます。必須にしない場合でも、追跡情報が抜けている取引を洗い出す専用のレポートがあるため、後から補完できます。

食品や医薬品のようにロット管理が求められる業種、精密機器のように個体管理が必要な業種では、この機能が導入の前提条件になります。

複数倉庫を管理する

拠点ごとの在庫を管理し、倉庫間の在庫移動も記録できます。倉庫別のレポートを作成できるため、「どの拠点に在庫が偏っているか」を把握したうえで移動を判断できます。

在庫切れと過剰在庫への対策

発注のタイミングを支援する設定が複数あります。

  • 再注文ポイントの通知:商品が設定した数量を下回ると通知され、在庫が少ない商品のリストをメールで受け取れる
  • 在庫がゼロ未満になるのを防ぐ:会計在庫に対して適用され、マイナス在庫を防止する
  • 在庫切れの警告表示:在庫不足の商品を販売する前に警告を出す(そのまま販売を続けることも可能)
  • 陸揚費用の追跡:輸送費や関税などを商品原価に含めて管理する

陸揚費用に対応しているのは、輸入を伴う商売では重要です。仕入単価だけを原価として扱っていると、実際の利益率を見誤ります。

受発注の流れを一気通貫で扱う

販売側と購買側、それぞれの流れが用意されています。

販売側

見積 → 受注 → パッケージ(梱包) → 出荷 → 請求、という流れです。受注書のステータスは初期設定のものに加えて、独自のステータスを作成して割り当てられます。自社の呼び方に合わせられるということです。

購買側

発注書、後積注文書(バックオーダー)、直送注文書(ドロップシップ)を作成できます。在庫を持たずに仕入先から直接顧客へ送る形態にも対応しています。

発注書をどの時点で完了扱いにするかも選べます。購入受領を記録した時点、受取請求書を関連付けた時点、その両方が揃った時点、の3パターンです。自社の検収ルールに合わせて設定してください。

マルチチャネル販売に対応する

Amazon、eBay、Etsy、Shopifyのアカウントと連携できます。

複数の販路で同じ商品を売っている場合、在庫の一元管理は死活問題です。ECで売れた分が社内の在庫表に反映されていないと、二重販売が起きます。チャネルを増やすほど、この仕組みの価値は上がります。

出荷と配送を追跡する

運送業者のデータと連携し、リアルタイムで配送ステータスを確認できます。AfterShipとの連携も用意されています。

出荷通知を顧客に送るかどうかは、手動出荷と配送業者による出荷のそれぞれで設定できます。

承認ワークフロー

取引が会計処理される前に、本人や同僚による確認を挟む承認フローを設定できます。

金額の入力ミスや宛先の間違いは、処理が進んでから気づくと修正の手間が跳ね上がります。人数が少ない会社ほど確認が形骸化しやすいので、システム側で止める仕組みを入れておく価値があります。

カスタマイズの範囲

カスタム項目

各タブに最大44個のカスタム項目を作成できます。データ型はテキスト、数値、日付、金額、ドロップダウン、複数選択、ルックアップ、複数行など多岐にわたります。ただしデータ型ごとに上限があるため(テキストは最大20、金額は最大4など)、設計時には配分を考える必要があります。

注目すべきは、カスタム項目に PII(個人を特定できる情報)の感度設定 ができる点です。さらに医療情報を扱う場合はePHIとして設定でき、入力されたデータは暗号化され、権限を持つユーザーのみがアクセスできます。

役割ごとの価格表示制御

販売価格・購入価格の項目について、役割ごとに「編集」「表示のみ」「非表示」を設定できます。仕入原価を全員に見せたくない、というよくある要件に標準機能で対応できます。

Delugeによる拡張

ここが開発会社としての注目点です。

カスタムボタン

Zoho Inventoryでは、各タブに独自のボタンを作成し、クリック時に実行する処理を Delugeスクリプト で記述できます。作成できるタブは、商品、顧客と仕入先、売上(請求書・受注書・貸方票)、購入(受取請求書・発注書)で、タブごとに最大10個までです。

公式ヘルプでは、次のような利用例が挙げられています。

  • クリックすると顧客に明細書を送信するボタン
  • 支払期限を過ぎた請求書に延滞料を発生させるボタン
  • 予約注文の常連客に割引を適用するボタン

つまり、標準機能では表現できない自社ルールを、画面上の1クリックに落とし込めるということです。Zoho CRMでDelugeを書ける人であれば、同じ言語がそのまま使えます。

カスタムリンク

外部サイトのURLをボタンとして設置でき、差し込み項目を使ってレコードごとに異なるURLを開けます。自社ECの商品ページを商品レコードから直接開く、外部システムを顧客IDで検索して開く、といった使い方ができます。

Webhook

ヘルプ内でWebhookの設定に関する記述があり、条件に応じて外部システムへ通知を飛ばせます。既存の基幹システムと繋ぐ際の起点になります。

まとめ

  • 在庫は実在庫(モノの動き)と帳簿在庫(お金の動き)の2軸で管理でき、どちらを基準にするかを最初に決める必要がある
  • 組み合わせ商品、価格表、単位変換に対応し、卸売やセット販売の実務に合う
  • シリアル番号とバッチ番号の追跡に対応。追跡対象の取引を選べ、未入力の洗い出しレポートもある
  • 複数倉庫、倉庫間移動、再注文ポイント通知、陸揚費用の追跡に対応
  • 見積から出荷・請求まで、発注書・バックオーダー・ドロップシップまでを一気通貫で扱える
  • Amazon、eBay、Etsy、Shopifyと連携し、マルチチャネルの在庫を一元化できる
  • カスタム項目はタブごとに最大44個。PII・ePHIの感度設定と暗号化に対応
  • Delugeでカスタムボタンを作成でき、標準機能にない自社ルールを実装できる

なお、機能によって利用できるプランが異なります。多通貨取引やカスタムボタンなどは対象プランが限られるため、必要な機能が使えるかどうかは評価版で確認してください。

AndSoでは、Zoho Inventoryの導入設計から、CRMやBooksと組み合わせた販売管理の仕組み作り、Delugeを使ったカスタムボタンや外部システム連携の実装までを承っています。「在庫の数字が信用できない」という段階からご相談ください。

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