Zoho Deskとは?できることと使い方を導入支援の現場から解説

問い合わせ対応を複数人で回していると、必ず起きる問題があります。誰が返信したのか分からない、二人が同じメールに返してしまう、一件だけ返し忘れて放置される。共有メールボックスで運用している限り、これは仕組みの問題なので気合いでは解決しません。
Zoho Deskは、この状況を整理するためのヘルプデスクツールです。今回は実際に検証環境を立ち上げながら、何ができるのか、どう設定するのかをまとめました。
Zoho Deskは何をするツールなのか
一言でいうと、届いた問い合わせ一件を「チケット」というカードに変換するツールです。
メール、電話、Webフォーム、チャット、SNSなど、複数の経路から届いた問い合わせをすべてチケットとして一元管理します。カードになると、一件ごとに担当者、ステータス、期限が必ず紐づきます。これだけで返信漏れと二重対応はほぼ無くなります。
残りの機能は、すべてこのカードを便利にするためのものです。自動割り当てはカードを誰に配るかを決める機能、SLAはカードに期限を付ける機能、ナレッジベースはそもそもカードを減らす機能、と整理すると全体像がつかみやすくなります。
Zoho CRMとの違い
同じZohoの製品でよく混同されるのがZoho CRMです。両者の違いはシンプルです。
Zoho CRMはこれから売るための管理です。見込み客、商談、受注を扱います。
Zoho Deskは売ったあとの管理です。問い合わせ、クレーム、サポートを扱います。
同じ顧客を営業目線で見るのがCRM、サポート目線で見るのがDeskということになります。そのため両者を連携させて使うのが一般的な構成です。なお、Zoho CRM Plusを契約している場合、Deskは最初から含まれているので追加契約は不要です。
主な機能
問い合わせ管理
チケットにはステータス、優先度、担当者を設定します。顧客とのメール往復はスレッドとして時系列に表示され、顧客には見えない内部コメントも残せます。
実務で効くのが衝突検出機能です。同じチケットを別の担当者が同時に開いていると、リアルタイムで警告が出ます。共有メールボックスでよくある二重返信を防げます。
そのほか重複チケットのマージ、一件のチケットの分割、指定日時に再表示するスヌーズ、返信前の上長承認、対応工数の記録といった機能があります。
オムニチャネル
メールは転送設定またはIMAP連携で接続します。Webフォームは埋め込みコードを自社サイトに設置し、送信内容をチケット項目にマッピングします。チャットはZoho SalesIQ連携、電話はZoho VoiceやTwilio、SNSはX、Facebook、Instagramに対応しています。
自動化
割り当てルールでは、条件に応じた担当者への振り分けや、ラウンドロビン方式での自動配分ができます。ラウンドロビンでは担当者ごとの業務負荷を考慮した割り当ても可能です。
SLAは優先度や顧客ランクごとに、初回応答何時間以内、解決何時間以内といった期限を定義します。超過時のエスカレーション先も多段で設定できます。
ワークフローはCRMとほぼ同じ感覚で組めます。条件に応じた通知送信、項目更新、タスク作成、カスタム関数の実行が可能です。Delugeが使えるので、外部サービスへの通知連携も実装できます。
ナレッジベース
FAQやマニュアルを記事として蓄積する機能です。公開すれば顧客の自己解決を促し、問い合わせ件数そのものを減らせます。社内限定にすれば、そのままチーム内のマニュアルになります。
チケット対応画面の横に関連記事が自動表示されるため、新人でも過去の対応と同じ品質で返信できるようになります。記事へのアクセス数や参考になった評価も集計されるので、読まれているのに評価が低い記事を優先して書き直す、といった改善が回せます。
記事テンプレート機能を使えば、見出し構成を固定して誰が書いても同じ骨組みにできます。執筆者ごとに構成がばらつく問題への対策として有効です。
カスタマーポータルとコミュニティ
ヘルプセンターを公開すると、顧客がログインして過去の問い合わせ履歴を確認したり、新規で問い合わせを送信できるようになります。テーマはHTMLとCSSでカスタマイズでき、サンドボックスで本番に影響を与えずにテストできます。
コミュニティはユーザー同士が質問し合う掲示板です。投稿をワンクリックでチケットに変換できるため、公開の場で答えづらい内容は個別対応に切り替えられます。良い回答はナレッジベース記事に転用することも可能です。
ただしコミュニティが機能するには、同じ製品を使うユーザーが相当数いることが前提になります。受託開発のように案件ごとに要件が異なる業態では、投稿が集まらず空のページが公開されるだけになりがちです。自社サービスを提供していて、共通の話題があるユーザーが多数いる場合に検討する機能だと考えたほうがよいでしょう。
レポートと顧客満足度
問い合わせ件数、初回応答時間、解決時間、SLA遵守率、担当者別実績などが標準レポートで確認できます。対応完了後に満足度アンケートを自動送信し、結果を自動でレポート化することも可能です。
設定の流れ
実際に検証環境を構築した際の手順です。この順番で進めるのが安全でした。
まず組織設定です。会社情報、タイムゾーン、業務時間、休日カレンダーを登録します。SLAが業務時間ベースで計算されるため、ここを飛ばすと後で全部やり直しになります。
次に部門です。サポート窓口の単位で部門を作成します。ここが最大の設計判断になるので、後述する注意点を必ず確認してください。
続いてユーザーと権限です。担当者を追加し、役割とプロファイルを割り当てます。データ共有ルールで部門をまたいだ閲覧可否も決めます。
そしてメールチャネルの接続です。自社ドメインの場合は、Desk側が発行するアドレスへ転送設定するのが最も安定します。接続後は必ずテストメールを送り、チケットが作成されることを確認してください。
CRM連携で注意すべきこと
連携設定を始める前に、必ず決めておくべきことがあります。
同期方向です。初期設定は双方向同期ですが、検証段階では一方向から始めることを強くおすすめします。テストで作成した架空の連絡先が、双方向設定だと本番CRMに流れ込むためです。
同期対象範囲です。同期対象はCRMのリストビューで指定します。いきなりすべての連絡先を選ばず、検証用のカスタムビューを作って数件だけ同期してください。
削除時の挙動です。片方でデータを削除したときの動作を、常に削除する、関連データがない場合のみ削除する、削除しない、の三つから選べます。テストデータの整理を考えると、まずは削除しないが安全です。
そのほか仕様上の注意点として、インポート対象は過去一年間に作成されたデータのみという制限があります。古い顧客データを移行したい場合は別の手段が必要です。また初回同期はデータ量によって完了まで数時間かかることがあります。
CRMの情報をDesk側に表示する
サポート対応中に、顧客の契約内容や購入履歴を確認したいというニーズはよくあります。実現方法は三つあります。
一つ目は標準の連携機能です。Deskの連絡先や取引先の詳細画面で、CRMの商談やメモを表示できます。ただしチケット画面に常時表示されるわけではありません。
二つ目はカスタム項目の同期です。CRMとDeskの両方に同名のカスタム項目を作り、連携設定でマッピングします。Deskの連絡先に情報が入るので、チケット詳細のレイアウト設定で表示項目に加えれば、対応画面から直接確認できます。追加開発なしで実現できるため、まずはこの方法を検討するとよいでしょう。
三つ目はWidget開発です。チケット画面からCRM APIを叩いて、リアルタイムで情報を取得して表示します。一顧客に複数の契約が紐づく場合や、商談やカスタムモジュールの情報を出したい場合は、この方法になります。zet CLIでの開発になるので、CRM側でWidgetを作った経験があればそのまま応用できます。
誰に向いているツールか
Zoho Deskが効果を発揮するのは、複数人でそこそこの件数を取りこぼさず対応する必要がある状況です。
逆に、問い合わせが月に数件しかない、対応するのが一人だけ、という状況では普通のメールで十分です。機能が多い分、部門設定や権限、割り当てルールの設計に時間がかかるため、オーバースペックになります。
また部門構成の設計ミスは後戻りが困難です。部門を分けると受信アドレス、担当者、ポータル、レポートがすべて分離されるため、あとから統合するのは非常に手間がかかります。導入前に窓口の分け方だけは紙に落として整理しておくことをおすすめします。
まとめ
Zoho Deskは、問い合わせをチケット化することで対応漏れと二重対応を防ぐツールです。CRM Plusを契約していれば追加費用なしで使えるため、共有メールボックスでの運用に限界を感じているなら試す価値があります。
導入時のポイントは三つです。業務時間の設定を最初に行うこと、部門は必要最小限に絞ること、自動化は割り当てルールから順に組むこと。この順序を守れば、大きな手戻りなく構築できます。
まずは検証用の部門を一つ作り、メールアドレスを一本つないでチケットが作成されるところまで確認する。この段階的な進め方が結果的に最短ルートになります。